奥さまの納棺

葬儀の仕事をしていると、同じお家で二回目、三回目とお葬儀を施行させていただくことがあります。一度施行させていただき「前にもみじさんでお世話になって良かったから」と言ってご依頼をいただきます。

先日、お葬儀のご依頼の電話がありました。
電話で故人様のお名前を聞いて驚きました。3年前に喪主様として、元気にされていた方が亡くなられたということでした。お身体を冷やしにご自宅へ伺うと、痩せられ3年前の面影が殆ど無くなっていました。

納棺の際、故人様の奥さまが「この人はパジャマじゃ駄目なの。スーツを着せてあげたい」とおっしゃり、故人様と握手をしながらシャツの袖を通され、靴下を履かされ、最後にネクタイを締められました。「髪の毛はこの辺から分けて横に流していたわ」「袖の所のボタンはいつも私が付けていたの」と語りながら、優しく故人様に触れられていました。最後には故人様がいつも飲まれていたアイスコーヒーで末期の水をされ、納棺は終わりました。

納棺後には「痩せてしまって面影があまりなかったけど、とても綺麗にしてもらえて良かった。ありがとう」と感謝の言葉をいただきました。お着替えやお化粧だけの力だけではなく、自分自身で故人様に触れ、一緒に体を拭いたり、ネクタイを締めてあげたりすることで、段々と心が大切な方の死を受け入れていくのだと思います。

納棺は見た目を綺麗にするだけではなく、ぽっかりと空いてしまった穴を少しでも埋めるためのとても大切な時間です。納棺の際は是非お立会ください。